根管治療

「もう“神経を抜くしかありません”は古い?」その歯の神経残せるかもしれません!!

こんにちは、オーラルクリニーク自由が丘 歯科&矯正歯科 歯科医師の諏訪です。
今回は神経を残せる可能性のある治療、生活歯髄療法についてご紹介します。
歯に痛みを感じている患者様の多くが、「もう神経を取るしかない」と諦めてご来院されます。
歯の状態にもよりますが、生活歯髄療法(VPT)を行うことで歯を残せる場合があります。

生活歯髄療法 自由が丘 歯医者

歯の神経を取ることのデメリット

虫歯が進行し、神経近くまで深く進行している場合、歯の根の治療が必要になります。
その場合に行われるのが抜髄(歯の神経を取る治療)です。
歯の神経を取る治療をおこなうことで、痛みはなくすことができますが、神経と一緒に歯に栄養を送る経路もなくなってしまうため、歯の寿命が短くなってしまいます。
イメージとしては歯の神経が木の根、残してある歯が木だと思ってください。
根がなくなってしまうと木は枯れてしまうと思います。
それと同じような現象が歯にも起こってしまうことがあります。
根管治療を行った歯が、メンテナンス中に割れてしまって抜歯になってしまうケースもあります。
もちろん歯の根の治療を行っても何年もそのまま維持している患者様もいらっしゃるため、一概に「必ず抜歯になる」ということはありませんが、できるだけ歯の神経は残す方法を取ることが重要だと考えています。


歯の神経を残すための生活歯髄療法
生活歯髄療法(VPT)は、歯の神経(歯髄)の一部または全部を保存することで歯の寿命を伸ばすための治療法です。
生活歯髄治療にはいくつかの方法があります。

① 直接覆髄法(Direct Pulp Capping)
むし歯の除去中に歯髄が露出した際に、保護材料(MTAセメントや水酸化カルシウム)を直接塗布して封鎖する方法です。
歯髄の炎症が軽度な場合に適用されます。

② 間接覆髄法(Indirect Pulp Capping)
むし歯の除去を完全に行わず、感染の恐れがある象牙質の一部を残したまま、保護材料で封鎖し、歯髄を守る方法です。
深いむし歯に適用され、時間をかけて再石灰化を促していきます。

③ 部分断髄法(Partial Pulpotomy)
歯髄の一部(炎症のある表層部のみ)を除去し、残りの健康な歯髄を保存する方法です。
特に、外傷で露出した場合や若年者の歯に適用されます。

④ 全断髄法(Full Pulpotomy)
歯冠部の歯髄を全て除去し、歯根部の健康な歯髄を保存する方法です。
特定の条件下で、従来の根管治療の代わりに行われることもあります。

虫歯の歯に行う場合は、直接覆髄法または間接覆髄法を主に行っていきます。


生活歯髄療法を行った患者様の症例
今回の患者様は「冷たいものがしみる」「噛むと痛い」という典型的な虫歯が進行した状態の症状を訴えてご来院されました。
その時のレントゲンが下記になります。

生活歯髄療法の治療前 自由が丘 歯医者

治療を行っている詰め物の下で虫歯が発生し、神経にまで到達してしまっている事がわかります。
今回の所見では、生活歯髄治療を行うことで歯を残せる可能性が高いと判断し、治療を提案しました。


生活歯髄療法の流れ

生活歯髄療法を行うためには、虫歯の取り残しや再感染を防ぐために、無菌的な環境を確保することが治療の成功に重要になります。。
当院ではラバーダム防湿法を行い患部のみを露出させ、無菌的な状態を作り上げた中で治療を行っていきます。
ラバーダム防湿法は治療する歯をゴム製のシート(ラバーダム)で隔離し、治療中の唾液や細菌の侵入を防ぐために行います。
この状態でマイクロスコープ(拡大顕微鏡)を用い、歯の内部を肉眼の約20倍程度まで拡大して確認しながら丁寧に虫歯を除去していきます。
除去後、MTA(ミネラルトライオキサイドアグリゲート)と呼ばれる生体親和性が高く、歯の修復や再生を促す歯科用の特殊セメントで歯髄を保護し、セラミックの詰め物(セラミックインレー)を行い治療は終了となります。

数カ月後、経過観察にいらっしゃった際のレントゲンが下記になります。

生活歯髄療法2週間後 自由が丘 歯医者

生活歯髄療法1か月後 自由が丘 歯医者

歯髄部分には特に問題なく健康な状態を維持していることがわかります。
患者様も「痛みもなく、普通に噛めている」とお喜びになりました。


歯の神経を残すための最善な方法
生活歯髄治療はどんな症例にも行えるという治療ではありませんが、症例によって、正しい処置を行えば歯の神経を残せる可能性が高くなります。
歯の神経が残っている歯と取ってしまった歯では、術後の保存確率には雲泥の差があります。
生活歯髄治療のように、技術が進歩することで抜髄(神経を取る処置)や抜歯が当たり前だった時代から、歯(神経)を残す選択肢が広がっています。
「歯(神経)を残せる可能性があるなら、その道を模索したい」という患者様のニーズにお答えするために、当院では生活歯髄治療を積極的に行っています。
もちろん、歯の状態によっては神経を残せない場合があり、根管治療が必要になる場合もございますが、患者様毎に抱えるリスクを把握し、メリット・デメリットをご説明したうえで、患者様に最適な治療をご提案していきます。
歯の神経を取らないといけないと言われて悩んでいる患者様や、できるだけ歯の神経を残したいというご希望をお持ちの患者様は、ぜひ一度当院にご相談ください。


【監修】歯科医師 諏訪敬太郎

日本大学歯学部卒業
患者様の生活を支える、長持ちする本質的な医療をご提供いたします